今回は、皆さんも一度は聞いたことがあると思われる「狂犬病(Rabies)」という病気についてご説明したいと思います。
狂犬病を一言でいうと、「発症したら最後、ほぼ100%助からない恐ろしい病気」です。
シンプルに4つのポイントで解説します。
1. どんな病気?
- 原因: 狂犬病ウイルス。
- 感染経路: ウイルスを持っている動物(犬、猫、コウモリなど)に噛まれたり、傷口を舐められたりすることで、唾液から感染します。
- 潜伏期間: 噛まれてから発症するまで、通常は1〜3ヶ月ほど(長いと1年以上)かかります。この間にウイルスが神経を伝わって脳へ向かいます。
2. 発症するとどうなる?
- 致死率100%: ひとたび発症(発熱、幻覚、麻痺などの症状が出る)してしまうと、現代医学でも有効な治療法はなく、数日以内に亡くなります。
- 恐怖の症状: 水を飲もうとすると喉が痙攣して苦しいため、水を極端に恐れるようになります(これが「恐水症」と呼ばれる理由です)。
3. どうすれば防げる?
唯一の救いは、「ワクチンで100%予防できる」という点です。
- 噛まれる前の予防(暴露前接種): あらかじめワクチンを打っておく。
- 噛まれた後の処置(暴露後接種): これが最も重要です。 噛まれた直後(できれば24時間以内)に病院へ駆け込み、ワクチンを数回に分けて連続接種することで、ウイルスが脳に達する前に免疫を作り、発症を食い止めることができます。※噛まれた後にワクチンを打ってもその予防効果は100%近くあると言われており、噛まれた直後の連続ワクチン接種で感染を防げます。またタイの多くの病院には狂犬病ワクチンが常備されているのが、唯一の救いです。
4.どこで発生してるの?
① 狂犬病は現在も多くの国で「発生中」の感染症
日本では国内で動物から感染した事例は、約70年間発生していません。 日本は世界でも数少ない「狂犬病清浄化国(狂犬病がない国)」の一つです。しかしながら、未だに世界の150以上の国と地域で狂犬病が確認されており、現在進行形の病気なのです。
タイでの動物での狂犬病感染
- タイ疾病管理局(DDC)が、2024年から2025年にかけての調査で、動物835検体中54例の感染例を確認(犬が最多、その後牛・水牛・猫も)と報告されています。
- 2025年も複数地域で感染動物が見つかり、当局は防疫強化を実施しています。
タイでの人での感染・死亡例
- タイ保健省の報告によると2024年から2025 年9月までには8名の死亡例が報告されています。いずれも犬咬傷後に曝露後ワクチン未接種が主な原因とされています。
② 都市部でも発生(バンコク・サムットプラカーン)
緊急制御区域の指定
- 2025 年 9 月、バンコク東部(プラウェート区)やサムットプラカーン県の一部が、狂犬病流行区域として一時的に指定されました。
- 当局は、犬・猫など哺乳類の移動禁止(約 1 か月間)や感染疑い動物の報告義務などを実施。
市民への注意喚起
- 保健当局は 野犬や猫に触れない・噛まれないよう広く呼びかけています。
下の写真、はタイ保健当局の狂犬病に関するポスターです。

③ 予防と曝露後対応
飼い主への呼びかけ
- 当局は 犬・猫の年1回以上のワクチン接種を強く奨励しています。
- これは 動物の免疫を保ち、伝播を防ぐ最も基本的な対策です。
人の曝露後対応
- 咬傷・ひっかき傷を受けたら:
- 石けんと水でよく洗う(10〜15分)
- 消毒し、すぐ医療機関へ(曝露後ワクチン接種)
- 当局へ報告と観察を実施。
④ なぜタイでまだ発生しているのか
タイでは:
- 野犬・外飼いの犬猫の数が多い
- 野良動物との接触が普通
- ワクチン接種率が十分でない地域がある
これらが根本的な感染維持の背景です。
そのため都市部でも発生・拡大のリスクが残っています。
⑤ 飼い主・住民・旅行者へのポイント
犬・猫を飼う場合
- 毎年の狂犬病ワクチン接種を確実に
- 屋外での放し飼いを避ける
咬まれた・引っかかれた場合
- すぐに傷を洗浄し、医療機関で曝露後ワクチンを受ける
まとめ
- 狂犬病はタイでは いまだ発生している重要な感染症です。
- 動物へのワクチン接種・適切な曝露後対応が命を守る鍵です。
- 都市部でも流行区域が指定されるなど、注意喚起が常に出されています。
